X線CTスキャン解説

2. X線CT装置(CTスキャナ)のしくみ

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CTスキャン装置の種類

装置はおおまかに、医療用と産業用にわけられます。

医療用 産業用
主な撮影対象と目的 人間・医療用 工業製品・検査用
走査方式 ヘリカル コーンビーム
撮影時間 10-30秒 数十秒から数十分
管電圧(kv) 80-140 20-500
価格 数千万~数億円 一千万~一億円
解像度 xy方向とz方向が異なる xy方向とz方向が同じ

価格について:
最近は、装置本体の価格を大幅に下げ、管球代などのメンテナンス代や修理代を高額に設定していることがあり、本体価格はあてにならなくなりました。装置を制御するのに必要なパソコンや装置組み立て費用を別途とし、本体価格を抑えている場合もあるようです。

CTスキャン装置のしくみ

産業用CTスキャン装置の場合、内部は次のようになっています。

産業用CTスキャン装置内部のようす
X線管から発生したX線が、エネルギーを吸収されながら試料中を通過し、X線検出器に到達します。検出器で得られた画像のことを、透過画像(透視画像、プロジェクションデータ、rawデータ)といいます。

X線管:真空管の一種。フィラメントを加熱して生じた電子を、電圧により加速してタングステン等の金属に打ちこみます。この際、制動放射(制動輻射)による連続X線と、光電効果による特性X線が発生します。発生するX線のエネルギー最大値は、打ちこむ電子の最大エネルギーと同じであり、X線管の管電圧と一致します。

X線のエネルギー分布

管電圧100kvの場合に発生する、X線のエネルギー分布


電子が衝突してX線が発生する領域の大きさは、焦点径であらわします。焦点径は透過画像の解像度に影響します。

X線検出器:到達したX線をさまざまな方法で検出します。
例1 半導体でX線を光電子に変換し、光電子を増幅した後、蛍光体に当て可視光線に変換し、CCDカメラで撮影
例2 蛍光体によりX線を可視光線に変換し、CCDやCMOSセンサにより検出
例3 半導体を用いてX線を直接電流に変換
検出器には、最終的に信号を得るカメラ・センサ・半導体が、縦横にそれぞれ400-4000個ほど並んでいます。

試料:撮影対象物を回転する台の上に乗せ、360度まわします。これにより、360度全方向からのX線透過画像が得られます。一回のCTスキャンにつき、合計300-3000枚ほどの透過像を撮影します。

医療用CTスキャン装置の場合でも基本的な構造は同じですが、以下の点で異なります。

  • 人を乗せている台のかわりに、X線管と検出器が一体となって回転
  • 回転と同時に人を乗せている台が回転軸にそってゆっくり移動(ヘリカルスキャン方式)
  • X線検出器は弧状に配列。回転軸方向に1-200個程度、円弧方向に800-1000個程度並ぶ
X線管

X線管

回転ステージ

回転ステージ

X線検出器

X線検出器

X線管の管電圧と撮影試料

管電圧が高いほど、X線のエネルギーは増大します。X線エネルギーが大きいと物質のX線線吸収係数(線減弱係数)が下がり、X線が撮影対象物を透過しやすくなります。

X線検出器に到達したX線のエネルギーが検出器の検出限界より小さいと、透過画像を得られません。金属などの密度が大きい物質や分厚い試料を撮影するときには、X線管の管電圧を高くすることが必要です。

逆に、密度の小さい物質や微小な試料を撮影する際には、管電圧を低くするほうがコントラストの高い透過画像を得られます。

1. X線CTスキャン(コンピュータ断層撮影)とは
3. CT再構成—断面画像を得る方法 

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